2005年10月25日

飼育者ができる有限資源の保全

この時期、オカヤドカリ飼育者には寂しい思いをしている人が多いでしょう。
季節の変わり目で昼夜の温度差が激しいためなのか、もともと自然環境下でもこのリズムだったのか、飼っているオカヤドカリが一斉に潜ってしまっている人も多いと思います。
あるいは、夏場には元気だったのに、原因不明の死によって愛ヤドの数を減らしてしまった方もおられるかもしれません。

動く生き物のいなくなった飼育ケース。
あんなにゴソゴソ動き回っていた可愛らしいオカヤドカリ。毎日、色々な表情や仕草、ズッコケっぷりを見せてくれていた生き物が、急に火の消えたようにいなくなるのは、とても寂しいですね。
「まだ売ってるところがあるのなら、新しいのを追加購入したいな」
その気持ち、とてもよく解ります。
しかも、ネットなどで情報検索すると“オカヤドカリは自然界では群れで生活しているので、たくさんで飼った方が良い”といった記事もあります。
「なるほど。じゃあ、やっぱりもうちょっと多く入れても大丈夫だ。むしろ、もっと入れたほうが良いんだ」
そう自分を納得させたい気持ち、これもとてもよく理解できます。

でも、少し冷静になって考えてみてください。
この時期(だけではないが)購入したオカヤドカリは、やはり(店頭展示→飼育ケースへというのも含み)環境の変化により、すぐに脱皮に入るケースが多いのです。買ってきた日すぐに砂に潜ろうとするものもいます。
すぐに潜ってしまうので、また寂しい思いをすることだけが問題なのではありません。
新しく入れたオカヤドカリが掘り返している砂の中には、脱皮中の無防備な先住者がいるのです。そこを掘り返されたら、先住者はどうなるでしょうか。
また、脱皮事故が起こらなかったとして、全ての(先住者も新入者も)オカヤドカリが無事に脱皮を終えたとしたら、どうでしょう。あまりにもたくさんの数のオカヤドカリがいれば、脱皮に関係なくとも喧嘩を防げません。
貝殻の取りあい、餌の取りあい、必要な栄養分…。足りないものがあれば、オカヤドカリという生き物は手近なところから調達しようとします。つまり横にいる仲間から奪います。
周りに同じような貝殻がたくさんあるにも関わらず、仲間の貝殻を奪おうと3日以上、相手を押さえ込んでいたオカヤドカリを、私は見たことがあります(無理矢理引き離したら、すぐに別の貝殻に引っ越したのですが、押さえつけられていた方は歩脚を一本食いちぎられていました)。

私も飼育者の一人ですから、たくさんのオカヤドカリを飼いたい気持ちは充分に解ります。
ですが、購入に踏み切る前に、少しだけ冷静に考えて欲しいのです。今のままで数を増やして大丈夫なのか。それとも新たに飼育ケースがいるのか。
生き物を買ってから、飼育システムを考えるのは、泥縄の悪循環ですしね(^_^;)
自然下で群れているオカヤドカリ(仲間に襲われても逃げられる、群から離れて脱皮場所を確保できる)と、店頭で多数展示されているオカヤドカリ(餌も水も与えないので脱皮する体力も争う気力もない、しかも短期間の詰め込み)と、飼育下での複数飼育のオカヤドカリ。
これら3つは、全て同列に語れるものではないということも、念頭に置いておいて欲しいのです。

いくら現地に行けばウジャウジャいる(と言われたのも数年前までの話らしいです)生き物でも、必ず数に限りのある大切な、同じ地球の仲間です。
非合法でない限りは、商品として扱うことに誰も反対しませんし、できませんし、その扱い様を批難することもできません。ただ、飼育者のレベルで“少しだけ冷静に”なること。それさえできれば、限りある資源を守れるのです。
そのことを、少しだけ考えてみませんか?
posted by プアマリナ at 16:11| 沖縄 ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | 海水魚飼育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月18日

うわぁ! 今度はヤドカリ武芸者の霊がぁ…(がくっ)

甞て某所に或人あり。軈て彼の人アクアショップを開業せり。
暫時、営業して後、漸ふにして曰く「生き物を商ふに於ては、自宅にて飼育せる如くには往かず。消耗品扱いするに忍びずと雖も、右から左への一流通商品に堕さざるを得ず」
我思ふに、彼の人を責むるに忍びず。生業なればこそ、この仕儀に及ぶも又やむなし。
但し、我更に思ふ。彼の人、万が一つにも“飼育情報”なるものを自ら語るなかれと。
販売が飼育とは異なるものであるに及びては、己が未経験なる事柄を、したり顔に他人に勧むるなかれと。
「簡便なり」とは、尚更言うまじき由也。

飼育者の存念に於ては、さらさら怠りなきよう。
世のペットショップなる輩の十に八、九は、蓋し斯くの如し。夢々肝に銘ずべし。
posted by プアマリナ at 20:41| 沖縄 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 海水魚飼育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月14日

独り言なので気にしないでね

私が数年来ずっと主張してきているのは、生き物を飼育するということは、金掛けて手間を省くか、手間ひま掛けて金を省くか、頭使って金も手間も省ける様に工夫するか…ということです。
なので、金も暇も頭もない私が生き物をたくさん飼ってるのは、苦行に近いです(T*T)
生き物によっては、金も手間ひまも掛けた上に頭も使わないと飼えないのがいるので、そういうのは私は飼えない。だから飼わない。

ちなみに、金にせよ、手間ひまにせよ、頭にせよ、それは全て生き物を飼うために使うものです。
飼育器材などには「ちょっと暴利じゃないか?」と思うようなものも多々ありますが、これだって生き物を飼うための目的で研究に研究を重ねて開発した末、需要が少なかったということに起因するので、(私は買えないが)止むを得ないことだと思っています。
私は、生き物で商売しているからといって、その業者を責めたことはない。文句を言ったこともない。批判したこともない。時々商品も買っている。
金も手間も頭もいらないよ。メンテナンスフリーの癒し系だよ!ってな嘘ついて売ってる業者や、騙されて結果的に金使わされて、それでも業者を信じ続ける(金と暇はあるが能天気な)カルトな連中が、受け入れられないだけだ。

私の知る限り、一般人の家庭で飼える生き物で、かつメンテナンスフリーな生き物は、イモリぐらいしかいない。定期的な餌やりや掃除はメンテナンスではなく常識ですからね。餌やりや掃除さえもメンテだと言うのなら、(飼ってると言えるかどうかは別にして)クマムシぐらいしか存在しない。
餌もやらず掃除もせずでは、バクテリアだって生きていられないぞ!

私が受け入れがたい業者は、生き物の命や飼育者の気持ちといった物には全く興味がなく、客受け(=金)にしか目が行っていないので、○○に耳の良い宣伝文句、即ち“簡単さ”しかアピールしない。そして他人様の飼育情報を盗む際にも、自分にとって都合の良い(=商売に利用できる)部分だけを(なぜかGoogleじゃなくてyahoo!で‘おかやどかり&天然塩’とか妙なワード検索かけてきて)抜き出そうとする。
キサマらの目は節穴か! あまつさえキサマらの稚拙な検索スキルに乗っからないからといって、「生態には解っていないことが多いのです」とは何事か。

私が受け入れがたい業者のカルトな客は、生き物を買う責任感や地球人の一人としての自覚に著しく欠けた○○なので、耳に心地よい安易な情報しか信じないし、ペットの命よりも自分が業者にちやほやされる方を優先し、“歯の浮くような追従”で業者を褒め称える。そして他人様の飼育情報を覗く際にも、自分にとって都合の良い(=死んだのは自分のせいじゃないと責任逃れできそうな)部分だけを(なぜかGoogleじゃなくてMSNサーチで‘おかやどかり&貝殻から出た’とかワード検索かけてきて)探して安心しようとする。
キサマらは全てにおいて完璧なるホンマモンの○○か! あまつさえキサマらの稚拙な検索スキルに乗っからないからといって、「ベテランの人でも解らないことだらけなんですよね」とは、言うに事欠いて何を抜かしとるか!

ってなことを、一度で良いから言ってみたいよな(^_^;)
posted by プアマリナ at 18:25| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月12日

甲殻類はベントスなんす

甲殻類は体が固い殻で覆われているので、環境変化に対応するには脱皮するしかないんです。
魚だったら、比重が高くなれば身が締まり、低くなれば膨張し、といった具合にある程度の適応力を持ちます(それでも、あまりに変化が激しいとショックで大暴れして死んでしまう)が、水棲のエビもカニもヤドカリも、温度・水質・ph・比重など、どれか一つでも環境に変化があると大暴れします。やがてグッタリとなって、脱皮します。この緊急避難的な脱皮は通常の成長に伴う脱皮よりも生存率がグッと下がります。
それを防ぐためには、新規投入の際、最低でも2時間ぐらいかけて水合わせをする必要があります。あまりに新旧の環境が違いすぎる場合は、慎重に水合わせしても脱皮に失敗、あるいは脱皮に成功してもダメージが残り、死んでしまいます。
投入の際に水合わせしなかった場合、あるいは大量に水換えした場合、あるいは少量水換えであっても脱皮後間もなくであった場合などは、即座に気絶してそのまま死んでしまいます。
成体のエビやカニやヤドカリは典型的なベントス(水底で固着生活を送る生物群と理解してください)ですから、そのベントスが大暴れするのを見て、まともなアクアリストなら「元気良いな」とは普通思いません。

ところで、陸棲の甲殻類の場合はどうでしょうか。
水の中に住んでいる物とは違い、周りは空気ですから普通に飼ってる限りは温度の急変以外には、そう神経を使わなくても大丈夫です。
しかし、よほど杜撰に管理されていた、あるいは乾ききった環境で萎びていた様な物を、急に(例え良い環境であったとしても)別の環境に放り込めば、やはり大暴れします。大暴れ以降は水棲甲殻類と同じなので省略します。
まさかとは思いますが、買ってきた陸棲甲殻類が大暴れするのを見て、「元気良いな」と喜んで手に取ったりしてる人はいませんよね(^_^;)
あるいは、霧吹きで水をかけたら「喜んで元気よく動き回るよ」とか言う人はいないはず(この場合はまだ慌てているだけなので、ずっと嫌がらせを続けないかぎりは生き延びる確率も高い)。

甲殻類にとって“大暴れ”は、時に“死の舞い”だということは、生き物を飼育するなら是非知っておいてほしいことなんです。
ちなみに、大暴れする個体=元気。暴れない(暴れる体力さえないほど弱ってる)個体=おとなしい。という風に“何でもええように言う”業者もいますので、生体を購入する際には、更に気を付けましょう。
posted by プアマリナ at 13:21| 沖縄 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 海水魚飼育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月04日

生き物の多数飼育に思う

例えばマリンアクアの世界では、「多数で飼った方が楽しいし、魚も喜ぶよ」ってな言葉に乗せられて、小さな水槽で、たくさんの魚を飼いはじめたものの、一匹、二匹と喧嘩で、あるいは弱って死んでいき、そのうち水槽全体の環境が悪化し、無駄な器具や魚病薬や水質調整剤の様なものまで買わされた挙句に、全滅&水槽崩壊。そこで初めて“もっと大きい水槽”を薦められ、唖然となったなんてアクアリストは、珍しくありません。
逆にショップ側から見れば、最初に小さな水槽での多数飼育を勧め、次々と小さい水槽専用の器具を追加購入させ、時にはサービスと称して不必要な匹数の生体をおまけし、飼育者が挫折したころを見計らって大きい水槽を勧め、次々と大きい水槽専用の(以下略)。という鴨は、大のお得意様なのです。
最初から大きい水槽を買う客や、小さい水槽であっても匹数を抑えて飼える客は、店の儲けにならないのです。

さすがに、この様な悪質なショップは最近では見なくなりました。
いわば手垢の着いたこのような手口に、アクアリストの方もおいそれと引っ掛からなくなったからなのでしょう。
さて、他の生き物の場合はどうでしょうね?
妙に多数飼うことを勧める業者や、小さい飼育容器を勧めてくる業者って心当たりありませんか?
posted by プアマリナ at 15:44| 沖縄 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | 海水魚飼育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月28日

凄い技だ!

3年殺しというのは伝説の技ですが、きっちり3年とはいかなくとも、外から見ただけでは判らない様な巧妙なダメージを与え、徐々に体の内部から弱らせ、ある日突然斃死に至らせるということは、武術の達人なら本当に可能だそうで。
別に「あたぁ! お前はもう死んでいる」の世界だけじゃなくて。現実に。

話は変わりまして、何年も前から、私の知り合いにはオカヤドカリを飼育している人が少なからずいましたが、当時から昨年辺りまでのオカヤドカリの死因などは限られたものでした。脱皮時の管理不足による食殺(死後か生前かは不明)か、餌や水をやるのを忘れたための餓死・乾死。
これ以外の死因はおろか、(POPで脚が取れてるのを除けば)自切でさえ、聞いたことも見たこともありませんでした。
余程の失敗でもしない限りは、ずっと生き続ける生き物です。我家でも最初に買ったオカヤドカリが今でも生きています。だから、ここ何年かオカヤドカリを店で買ったことがありません。
そもそも私の周囲のペットショップでは、売れないからかオカヤドカリは姿を消していましたし…。

ところで、市場で製品がなかなか回転しないと、消費者は良くても供給側は困るので、最初から耐用時間を短くしておくというのは、よく使われる手だそうで、鍋やフライパンなども技術的に“数年間は絶対に焦げ付かない”物が作れるにも関わらず“焦げ付きにくい”物しか売られていないのは、そのためもあるそうです。
メーカーでさえこうなので、販売店レベルでの達人になると、商品を素早く回転させるための“凄い技”をいくつも隠し持っていて、本来なら耐用年数のあるものに巧妙なダメージを与えておき、クレームにならない時期を見計らって壊れる様にすることも可能なんだそうです。
「クレームどころか、客は相談に来おる。そこで親切にアドバイスしてやって、時機を見て新しいのを薦めたったら、すぐまた買うていきおる」
だ、そうで。悪いやっちゃなぁ(-_-メ)

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posted by プアマリナ at 14:05| 沖縄 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月13日

カトリーナのもたらしたもの

ニューオリンズで、たくさんのペットを愛する人と、飼い主を愛するペットが、非常に困難な状況になっている様です。
詳しくは、こちらをご覧ください。
心ある“全く個人”の方による解説書(和訳)ですが、この手順を元にすれば、簡単に送金できます。
posted by プアマリナ at 14:04| 沖縄 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | モノ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月08日

読切り編:県警外事課

 県警外事課長の一山は、呟いた。
「おかしいやないか。何が起きとるんじゃ? もういっぺん説明せい」
「それが課長。奇妙なお経が聞こえてくるそうなのでありますが…」
「それは聞いた。頭を言ってくれ、郁道くん」
「は、つまり果物屋の店先で、であります」
 一山は、眉を寄せる。ただの果物屋でないことは掴んでいた。夜ごと数多くの殻をかぶった霊が現れ、しかもその中には明らかに不法入国したと思われる外国産の霊も含まれているという。だからこそ外事の出番になったのだが…。
「霊を調伏するためじゃろが?」とは言ったものの、もちろんそんなはずはない。「いや、あの冷酷非情な男に、霊を成仏させたろっちゅう善意があるとは思えんな」
「は、しかもであります。昨夜は多数の僧侶が近くで目撃されておりますが…」
「なんじゃと? 僧侶の集団!?」
 背中を冷たい汗が流れる。その時、目の前の電話が鳴った。更に嫌な予感を感じつつ、彼は受話器を上げた。部下にスピーカーをオンにするよう手で示す。
「やあ、南畝くん。口子だが、先日の件の続報を伝えておこうと思ってね」
「こ、これは…。先日の件って、あのフジコTVプロデューサー失踪事件ですか?」
「いや、それはもう埋葬済みだ。この意味は解るね?」
「は、はい」今やシャツの背の色が変わるほど濡れている。「フジコTVって何チャンネルだったか、さっぱり解りませんねぇ」額にも浮かんだ汗を必死でぬぐう。「で、口子さん。何の話でしたっけ?」
「もちろん、例の果物屋の件だ。あれは加藤改の管轄になったよ」
「か、かとうあらためが…」一山は息を呑んだ。なぜカンキー和尚が…。
 確かに尋常の業者ではない。たかだかの色変わりでオカヤドカリの値段を吊り上げる悪辣な手口も野放しにできるものではない。だが、変わった色のものを欲しがる消費者だっている。アジアアロワナやクリスタルレッドシュリンプだって、いや金魚でさえ、ちょっとした色の違いでグレード分けされている昨今だ。カンキー和尚部隊が動くほどのことなのだろうか…。
「その疑問は尤もだ。だがな南畝くん。甲殻亜門の体色とは何だ。カロチノイド系の赤色色素アスタキサンチンに、青や紫といった色の結晶を生ずるプロテインが結合したものだ。その結合の強度や色素の多寡によって様々な見た目の色を呈するわけだが、これは棲息環境や食物による影響を強く受ける現象だ。つまり棲息環境や食物が変われば次の脱皮によって変色する」
「ちょっと待ってください」一山は部下の方を向く。「おい、メモは取らんで良い。どうせにわか仕込みだ」
「聞こえたよ。南畝くん。その通りだが、続けよう。棲息環境や食物による獲得形質が遺伝しないのは知っているな? オカヤドカリにも遺伝的要因で様々な変色が見られるのは当然だが、CRSの様に赤色の強い個体を何世代にもわたって淘汰し、純粋培養し、変色を固定していかないかぎりは、そうそう珍しい色が商売になる訳はない。しかもオカヤドカリの繁殖は個人飼育者レベルではほとんど不可能だ。数千円から数万円の費用を使い、毎日小まめなメンテナンスを行い、数百匹のゾエアを数匹のグラウコトエにするのがやっとだ。しかも、その数匹の中に強く変色遺伝子を受け継いでいる子孫が混じっている可能性となるとゼロに近い。つまり投機的価値は全くない」
「なるほど。高値で落札したもののすぐに変色する可能性が高く、例えちょっとばかり珍しい色であったとしても一代限り…。まさに詐欺ですなぁ」
「そうだ。だが、この程度のセコイ詐欺事件で加藤改が動くはずはない。グラウコトエが繁殖できる大きさに育つまで何年かかると思う? それに気付けばネアンデルタール人以上の知能を持つ生き物なら、恥ずかしすぎて生きてはいられないはずだろ」
「二足歩行を憶えて後は、首を括りたくなるほど恥ずかしいことだという意味ですね?」
「いや南畝くん。アウストラロピテクスは既に二足歩行していた。訂正したまえ」
「すみません。要するに我国にネアンデルタール人が生き残っていては問題があるので、外事の私に話が来たのですが、実はアウストラロピテクスだったのでカンキー和尚部隊の管轄に変わったということですね?」
「ややアウストラロピテクスに失礼な表現だが、当たらずと雖も遠からずと言ったところだな」



【今回の登場人物紹介】
一山 南畝(ひとやまなんぼ)=県警外事課長。
郁道 温(いくどうおん)=一山の部下
口子ボス(ぐちこボス)=二課長。島の上司。

【会話に登場した組織の解説】
加藤改カンキー和尚部隊(かとうあらためカンキーおしょうぶたい)
俗姓加藤、得度後カンキー和尚を名乗る謎の人物に率いられた特殊部隊。かなり情け容赦のない手段を採ることで、その筋では有名らしい。蛇足だが部隊の英文表記は「Team Kanky osho」。
posted by プアマリナ at 19:34| 沖縄 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月05日

二課長に取り次ぐまでもねぇ!

「どうです? 我々はちゃんとした報道をしたでしょう」
 したり顔で現れたフジコTVのプロデューサーに、島の怒声が飛んだ。
「何を抜かしやがる!この外道が! オカヤドカリはペットとして飼いならされた生き物じゃねぇ!人間と友達にはなれねえんだ。それをなんだ? 癒し系ペットとは、一体全体どういう料簡で報道してやがる」
 プロデューサーの顔色が急変した。
「で、でも、ちゃんと茶の間に伝えたじゃないですか。愛情を込めて育ててあげなければいけませんよって…」
「クソ野郎! そんなことは胡乱な詐欺紛いカルト業者でも、腐るほど言い続けてんだよ。良いか、よく聞け。生き物活かすに身勝手な愛情なんてのは要らねえ。手順と自覚と常識さえありゃ良いんだよ!」
「し、しかし、病める現代人には癒しは必要では…」
「なら、てめえのピーでも勝手に愛情込めて育てとけ! そんな変態野郎を癒すのに貴重な野生動物をばんたび殺さにゃならん理由が、どこあんだ?」
「い、いや、しかし、いじり倒したからって、必ず死ぬとは限らないじゃないですか」
「死ぬんだよ。この俺にイビリ倒されたテメェが明日の朝には冷たくなってるのと、同じぐらい確実なことだ。おい、阿有。一応権利ぐらいは読み聞かせてやれ」
posted by プアマリナ at 19:47| 沖縄 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月01日

緊急番外編:記者会見

「我国の天然記念物オカヤドカリの捕獲は、一部の許可を得ている業者のみが行っている。捕獲方法は餌で吊って無作為に採取するだけだ」
 口子は全く臆することなく報道人のひしめくフロアを傲然と見渡した。
「取り子 --要するにパートだな-- が、無作為に採取し、許可業者が無作為に出荷し、出荷トン数で分化庁に届け出ている。ところが、近年では変わった色やベビーヤドなどといった、ひとたび脱皮すれば並のオカヤドカリになってしまうような代物が、オークション他で高値取引され、珍種・奇種コレクターの様な飼育者も現れている。もちろん、多くの良識的な愛好家は、高値取引されていることが詐欺に近いことを知っているが、残念ながら知らない○○もいるようだ」そこで片頬にニヒルな笑いを浮かべる。「おい、解ってるだろうが、○○はオフレコだぜ」
 口子の弁は続く。
「昨今では、取り子や捕獲許可業者の中にも、変わった色や小さなオカヤドカリが高く売れることに気付き始めたところもあるようだ。売買の段階だけではなく、採取段階で珍種・奇種が珍重されるようになった場合、表に現れてくる届け出数の陰で、その数倍の命が無駄に廃棄されることは、国内外での他の生き物の例を見ても既に結果の出ていることだ。増してや厳格な捕獲規制のある --;並の色で大きさの-- 天然記念物がたどる運命は、それこそ悲惨としか言い様がない!」
「しかしですねぇ、課長さん。色変わりはともかく、ベビーヤドとやらは別に環境には影響ないんじゃないですか?」
 明日新聞の記者から、尤もらしいアジが飛ぶ。口子はそこへ一瞥をくれると、また真正面を向き、口を開いた。
「キサマらの盆も暮も解らん頭に言って聞かせるのもおこがましいが、分化庁への届け出は匹数ではなくトン数でだ。小さいほど高く売るセコい業者には有利な条件だ。昨年辺りから販売されているオカヤドカリが小さい個体ばかりになっていることに、思い当たらないか。小さい個体をたくさん採った方が効率良く売れ、しかも珍しい色が捕獲できる可能性が高いんだ」
「そんなバカな。そんな悪魔みたいな業者が、本当にいるんですか」と、詠売新聞の記者。
「私の知る限り、この悪逆非道な、しかもむっちゃセコい詐欺紛い商法を行っている販売業者は、国内に3者いる。そのうち最も後発の1者が、明日、9月2日のFTV朝のワイドショー“おとくダネ!”で取り上げられるそうじゃねぇか。まさか天下の“おとくダネ!”が、いい加減な取材の末、この悪逆非道な業者を利するような報道を行い、我国の貴重な生き物の絶滅に拍車をかけるようなことをする訳はないだろうな」
 それまで他人事の様にニヤニヤ笑っていたフジコTVのプロデューサーの顔色が、サッと変わる。
「いや、これは課長さん、手厳しいですなぁ」
 会場が笑いに包まれた。
「このクソ野郎ども! 笑ってる場合じゃねぇぞ。キサマんとこの“おとくダネ!”がいい加減な報道をしてみろ。我国の未来は悲惨だぞ。判ってるんだろうな」
「もちろんですよ。ウチは何と言ってもバラエティのフジコTVですから…」
 また、会場に笑いが起きた。
「よーし! いい根性だ。明朝のキサマらの番組が楽しみだ。言っておくが注目しているのは、生き物に興味を持つ一般人だけじゃねぇぞ。ある意味では今回の衆院選よりも注目度が高いんだからな」
posted by プアマリナ at 20:40| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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