昨年、オカヤドカリ飼育セット(なるもの)を取り扱うホームセンターやペットショップを震撼させた噂がありました。
「ヤドカリ会なる団体が、オカヤドカリの不適切な販売方法に対してクレームを着けている」と。
この噂が作為的に流されたものなのか、それとも不作為に流れたものなのか、私には判りませんが、この噂はオカヤドカリを生き物として扱って欲しいと願う人々にとっては、全く役に立たず、逆に、オカヤドカリを消耗品扱いしたい連中を利する結果に繋がりました。
オカヤドカリ愛護団体、あるいはクレーム団体というレッテルを貼ることによって、事情をよく知らない一般消費者の反感を誘い、かつ、販売店側に猜疑心を植え付け頑なにさせました。
「ヤドカリ会が何か言ってくるかもしれませんけど、ただのクレーム団体ですから無視して下さい」等という卸業者のセールストークが聞こえてきそうです…。
もちろん実際には、ヤドカリ会(というネーミングセンスの悪さはさて置き)などという団体は、存在していません。
仮定の話で団体を作るとしてみて、オカヤドカリ飼育の第一人者で、その実力があるのは、国内ではハートミット・クラブのとれもろさん、みーばい亭の波風さん、偏屈の洞窟のcaveさん。この3人以外には見当たりません。
しかし、このお三方は人数を組織して、販売店にクレームを付けさせよう等という発想とは全く縁のない方々です。
あるいは、海外在住の方ですが実力者である、そお風さん。この方も、時に(メーカーや販売店から見れば)言動が過激になることはあっても、徒党を組んで圧力をかけよう等という陰黠な手段を採ったりはしません。
上記4名の方からすると実力は格段に落ちますが、不祥プアマリナ。この男ならやりかねないですと?
ふむ。確かに、おだてられると木にも登る人間には違いないですが、何しろ人望がありませんから、誰もおだててはくれない(~_~;)
要するに、昨年、オカヤドカリ飼育セット(と称するもの)を取り扱う販売店に寄せられた意見は、どれも店頭での惨状を憂慮した消費者が、自分の意志で自分の意見を述べたものです。どこかで扇動されたり、洗脳されたりしたものでは、決してありません。
そして、これは最早噂でも何でもなく、実際にあった事例として「専門家によるアドバイスを受けているので、この販売方法で大丈夫です」という販売店側の受け答えが、複数報告されています。
その中には、販売店側が苦し紛れの、その場逃れで答えたものもあるでしょうが、メーカー側から「そう答えるように言われた」という例もあるのです。
そもそも“専門家”とは何ぞや。
我国の、(縁日で買ってきて数日で死なせるというのを除けば)浅いオカヤドカリ飼育の歴史から見て、オカヤドカリ飼育の“専門家”と呼べるのは、上述した4名の方と、数年前から一切の活動を停止しているヤドカリ研究所のyamさん。この5名以外にはいません。
この5名なら、間違っても「水も餌もやらないでください」等というアドバイスをする訳はありません。
となると、一体何の専門家なのでしょうね。
水も餌もやらない。実はこれは(ペットを含む)生体流通の過程では、常識です。
遠方から飛行機や船や車で、ゆらゆら揺られながら輸送されてくる生き物に水や餌を与えていると、乗り物酔いで食べた物をもどすことがあります。乗り物酔いしない生き物であっても排泄は行いますから、やはりケース内は汚れます。
ただでさえ輸送疲れで弱っている生き物を、吐瀉物や排泄物と一緒に入れていては下手すると死着ということになりますから、生体流通の過程では水や餌はやらないのです。
ただ、ペットとして売られるのであれば、店頭に到着して数日すれば、餌も与えられ、排泄物も掃除してもらえる。当たり前ですが、これも常識です。
ところが、オカヤドカリは、実はペットとして流通した生き物ではなく、残酷な話ですが、元々は釣りの生き餌として流通した生き物です。数年前までは「釣り餌のオカヤドカリを、飼育しても面白いよ」といった程度の扱いで、購入者が釣り針に掛けて海に放り込むまで“活きが良ければ”構わない代物だったのです。
釣り餌とは残酷だとか、そういうことをここで述べたいのではありません(述べたくない訳でもないけど)。
ただ、“飼育”を目的とした購入を考えている消費者に対して、曲がりなりにも“ペット”として販売しているショップが、「専門家によるアドバイス」を頑なに守り通すべきなのかどうか。
そのことを、一度、冷静になって考えて欲しいのです。
(続く)