2005年09月01日

緊急番外編:記者会見

「我国の天然記念物オカヤドカリの捕獲は、一部の許可を得ている業者のみが行っている。捕獲方法は餌で吊って無作為に採取するだけだ」
 口子は全く臆することなく報道人のひしめくフロアを傲然と見渡した。
「取り子 --要するにパートだな-- が、無作為に採取し、許可業者が無作為に出荷し、出荷トン数で分化庁に届け出ている。ところが、近年では変わった色やベビーヤドなどといった、ひとたび脱皮すれば並のオカヤドカリになってしまうような代物が、オークション他で高値取引され、珍種・奇種コレクターの様な飼育者も現れている。もちろん、多くの良識的な愛好家は、高値取引されていることが詐欺に近いことを知っているが、残念ながら知らない○○もいるようだ」そこで片頬にニヒルな笑いを浮かべる。「おい、解ってるだろうが、○○はオフレコだぜ」
 口子の弁は続く。
「昨今では、取り子や捕獲許可業者の中にも、変わった色や小さなオカヤドカリが高く売れることに気付き始めたところもあるようだ。売買の段階だけではなく、採取段階で珍種・奇種が珍重されるようになった場合、表に現れてくる届け出数の陰で、その数倍の命が無駄に廃棄されることは、国内外での他の生き物の例を見ても既に結果の出ていることだ。増してや厳格な捕獲規制のある --;並の色で大きさの-- 天然記念物がたどる運命は、それこそ悲惨としか言い様がない!」
「しかしですねぇ、課長さん。色変わりはともかく、ベビーヤドとやらは別に環境には影響ないんじゃないですか?」
 明日新聞の記者から、尤もらしいアジが飛ぶ。口子はそこへ一瞥をくれると、また真正面を向き、口を開いた。
「キサマらの盆も暮も解らん頭に言って聞かせるのもおこがましいが、分化庁への届け出は匹数ではなくトン数でだ。小さいほど高く売るセコい業者には有利な条件だ。昨年辺りから販売されているオカヤドカリが小さい個体ばかりになっていることに、思い当たらないか。小さい個体をたくさん採った方が効率良く売れ、しかも珍しい色が捕獲できる可能性が高いんだ」
「そんなバカな。そんな悪魔みたいな業者が、本当にいるんですか」と、詠売新聞の記者。
「私の知る限り、この悪逆非道な、しかもむっちゃセコい詐欺紛い商法を行っている販売業者は、国内に3者いる。そのうち最も後発の1者が、明日、9月2日のFTV朝のワイドショー“おとくダネ!”で取り上げられるそうじゃねぇか。まさか天下の“おとくダネ!”が、いい加減な取材の末、この悪逆非道な業者を利するような報道を行い、我国の貴重な生き物の絶滅に拍車をかけるようなことをする訳はないだろうな」
 それまで他人事の様にニヤニヤ笑っていたフジコTVのプロデューサーの顔色が、サッと変わる。
「いや、これは課長さん、手厳しいですなぁ」
 会場が笑いに包まれた。
「このクソ野郎ども! 笑ってる場合じゃねぇぞ。キサマんとこの“おとくダネ!”がいい加減な報道をしてみろ。我国の未来は悲惨だぞ。判ってるんだろうな」
「もちろんですよ。ウチは何と言ってもバラエティのフジコTVですから…」
 また、会場に笑いが起きた。
「よーし! いい根性だ。明朝のキサマらの番組が楽しみだ。言っておくが注目しているのは、生き物に興味を持つ一般人だけじゃねぇぞ。ある意味では今回の衆院選よりも注目度が高いんだからな」
posted by プアマリナ at 20:40| 沖縄 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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