2005年03月11日

第九話:驚愕の事実

 それ以後、素直になった納野から話を聞きだすことは簡単だったが、その内容は到底理解しがたいものだった。
「なんだと! 水道水とポップコーンだけで飼えるだと? そんな生き物がいてたまるか」
「いや、でも本当なんです」
「そうなのか? うーん…。確かに俺の親父も戦時中は芋の蔓だけ喰ってたらしいしな。だが早死にしたぞ」
「はあ、それはお辛かったでしょうね。刑事さん」納野はわざとらしく哀しげな表情を作る。「人間の場合は色々な物を食べないと栄養が偏ってしまいますからねぇ」
「ヤドカリは違うってのか?」
「はあ、生き物には色々なのがいましてね。例えばフリソデエビってエビはヒトデの内臓だけを専食しますし、ソウシハギなんて魚もイソギンチャクの仲間のね、小っちゃなポリプばっかり好んで食べてるらしいです」
 島には全く判らない生き物の名前が、納野の口からスラスラと出てくる。奇妙だ。
「随分と生き物に詳しいじゃねえか、マネジャーさん」納野の顔色がさっと変わる。「で、その生き物に詳しいマネジャーさんとしては、本当にその陸に住むオカヤドカリとかってヤドカリは、ポップコーンと水だけでも長生きすると自信を持って言えるんだな?」
「いえ、メーカーさんから…」
「メーカーさんじゃねぇ!」島はまた芝居を打った。机をバンと叩く。「メーカーさんはこの際、関係ねぇ! あんたの、生き物が好きなあんたの意見が聞きてぇんだ。矜持としてだ」
 再び納野は泣き崩れた。
「ぅああああ……。すみませんでしたぁ。刑事さん。でもメーカーさんからは、簡単に飼えるよう言うように指導されているんです。本当は、本当は色んな食べ物を与えないと長生きさせられないんですぅうう…」
 半ばヤケクソ気味の嘘泣きだと、島にはとっくに判っていたが、声音を和らげて言った。
「解るよ、マネジャーさん。あんた家族がいるんだもんな。刑事ってのは鬼じゃねぇ。他人様の飯の種にまでどうのこうの言うつもりはねぇんだ。だから、そのメーカーさんの名前をこっそり俺に教えてくれ」
「ToMy玩具さんです」

【今回の登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。この物語の主人公。顔が怖い。
納野マネジャー(なんのマネジャー)=等級バンズのマネジャー。

【今回の登場企業】
ToMy玩具(トゥマイがんぐ)=ポップコーンが大好物で水道水で飼える色とりどりの貝殻を背負った面妖なオカヤドカリ「ハーメイトクラブ」の発売元。


posted by プアマリナ at 11:59| 沖縄 ☔| Comment(1) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> ToMy玩具(トゥマイがんぐ)

あーっはっは!この会社は有名になったねぇ、海外にも。
しかしここは貧乏籤引いた。広告屋と卸屋どもに乗せられたんだよ。社会的立場自覚せず安易に金儲けに走るから。もう懲りたでしょ。

>「ハーメイトクラブ」の発売元。

スペルはどんなの。Her Mate Crab? プアさんのHWCはHot Women Clubかな。
Posted by そお風 at 2005年03月12日 10:21
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