2004年12月06日

第五話:怪しい店員

 等級バンズ。元々はDIY、アクセサリー・小物用の素材や工具などを売っていた大規模小売店で、それだけでは商売が成り立たないためか、最近では既にして完成した、バラエティグッズ売場が拡張の一途をたどる妙な店だ。
 何でも「きゃわいーン」とか言って欲しがる、完全に主体性の欠落した客層に、「癒し系○○グッズ」と銘打ったコンセプトもクソもない、珍妙な物品を売りつける類の悪質なバラエティショップと言えるだろうか…。
 あの邪悪な貝殻を販売しそうな店ということで、島の勘働きは決して狂っていないはずだった。だが彼がいくら探しても、イチゴはおろかスイカの模様でさえ入った貝殻一つ見付からない。かろうじて“天然素材”コーナーに、海辺の土産物屋で見るような、そこらの海岸で拾ってきました然とした普通の貝殻を見付けたのみだ。
「あのー、すみません」たまらず島は、濃い緑色のエプロンを纏った店員に声をかけた。「あのー、おじゃましますぅ…」
 何かの作業をするふりをしていたアルバイトらしき青年が、さも迷惑そうに、あるいは己の不運を神に託つかのように、険しい眉間の皺を隠そうともせず島を睨み据えた。
「はあ!? 俺っすか?」
 誰でっか謝ってんのは?とか、邪魔すんねやったら帰ってか!とか、そんな気の利いた返事を期待していたわけではなかったが、仮にも客に対してこの態度は何だ。いやよく考えてみると客ではないのだが、それにしてもだ。
「あんなぁワレ!」おっと、しまった。十数年ぶりに地が出てしまった。「俺はないんちゃうけ!」こうなるともう一度仮面をかぶり直すのに時間がかかるんだ。「この貝殻のな、ごっつぅえげつない色塗ったヤツあるやろ。どこや?」
 深緑のエプロンに忠野という名札を付けた、彼自身としてはこの世で最も運の悪い人間だと思っているであろう青年は、やおら態度を改めた。
「ははぁ! 相申し訳ござらぬ。その御貝殻にございますれば、B1Fのヒーリンググッズコーナーの方にて、当今お売り致しておったかと心得申しそうらえども…、しかとは相分からず。フロアマネジャーの方にご連絡の方、致しておきますれば、お客様の方、それにて一件落着の方で宜しかったでしょうか?」
「あ? 何のこっちゃ解らねども、良きに計らえ、あのよろし…」
 島も、釣られて思わずシドロモドロになりながら、ともかくB1Fに行ってみれば良いんだろうと腹を括り、エスカレータに乗る。
 それにしてもヒーリンググッズとは一体どういうことだ。あんな毒々しいサイケな貝殻を見て癒されるほど、現代人とは病んでいるのか。それともあの忠野という青年の言い間違いで、ヒーリングではなくヒーラーグッズということなのか。それなら納得できる。
 そして、B1Fで、島は自分の想像が間違いではなかったことを知る。件のコーナーで彼が目にしたものは、“ヘロヘロ”という商品名で売られる『ハワイ産エビ営利誘拐強制監禁致死ケース』や、“コッパー”という商品名の『中華的鯉科小魚監禁致死瓶』だった。
「こりゃぁ、酷ぇ。悪役どころか本物の悪魔でもここまではやらんぞ…」


【今回の登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。この物語の主人公。
忠野店員(ただのてんいん)=等級バンズの店員。言語不明瞭にして意味も不明な青年。


posted by プアマリナ at 19:45| 沖縄 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おっ、さすがにプアさん。
展開が一筋縄ではいきませんなー。

しかし、犯罪の背後に巨大資本の存在があるのなら、捜査を進めればロングハンドが伸びてくるでしょうし、よしんば追い詰めたとしても、下っ端を二人ばかり自殺させておしまい。
すっきり溜飲を下げるなら、やっぱり問答無用でぶっぱなすしかないんでは?
個人的にはトマホークでもぶち込みたいんですがね。
テポドンで応戦されたりして(^^;
Posted by 波風 at 2004年12月06日 22:11
で、ゴルゴはどこの壁際で葉巻吸ってるデスか?

Posted by cave at 2004年12月07日 01:52
ゴルゴはともかく、ゴノレゴならここにおりまする。
http://www.poeyama.com/gonorego/
Posted by プアマリナ at 2004年12月07日 10:25
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。