2004年11月25日

第三話:参野場ビーチ死骸遺棄事件!?

 参野場海岸の現場には、すでに黄色と黒のテープが張りめぐらされ、その中で紺のフード付きジャンパーを着た鑑識の連中が忙しく動き回っている姿が見られた。その真ん中で白い布をかぶされているのが、ガイシャだと思われる。
 矢浪を伴って現場に近づいた島の前に、パリッとしたスーツを着こなした四十絡みの男が立ちふさがった。
「よう、デカ長。二課は今頃お出ましか。大方また豚丼でもパクついてたんじゃないのか?」
 見るからにエリート然とした、この一課長のことを常から島は嫌っている。ブランド物のスーツに長靴は似合わない。
「雑布さん、早いっすねぇ。もしかして、あんたがホシじゃぁないですか?」
「フン」鼻で笑い、雑布は言った。「今一回りしてきたがな、こりゃ事件性は薄いな。ホトケはヤドカリなんだが、海にヤドカリがいても何の不思議もないしな。勝手に死んだんだろう」
「でも一課長、ヤドカリは磯にはいるけど、こんなビーチには普通いないんじゃないですか?」と矢浪。「だれかがここで殺したってことは考えられませんか?」
 雑布は矢浪をジロリと睨みつけ、言った。
「そんなのは最初に潰してある。いいか青二才。あのホトケはな、素っ裸で死んでるんだ。誰かが殺したんなら貝殻の破片が落ちてるし、ホトケの体にも何らかの傷が付いてるはずだ。だがあのホトケには傷一つねえ。それどころか足一本と取れちゃいねえんだ」
「すみません」
 蚊の鳴くような声で謝り俯いた矢浪を、勝ち誇ったように見下ろし、島に目を向けた。
「ま、そういう訳で一課はもう引き上げるとこだ。このヤマはやるよ。二課は二課で勝手に調べてもかまわんぞ」
 言い捨てるや、さっさと立ち去った。
「あの野郎、威張りくさりやがって…。これだからキャリアは嫌いなんだ」島は、すっかりしょげかえった部下に目を向け、励ますように言った。「おっと、すまん。お前もキャリアだったな」
「はあ、でも自分はグッピー飼ってまだ10年ですから…。一課長はアロワナ歴20年のベテランですし、比べ物になりませんよ」
「そうか、キャリアにもいろいろあるんだな」
 しんみりした口調になる。遠い昔、祭の夜店で貰った2匹の金魚 -- 1匹も掬えなくても2匹は貰えるシステムだった -- を三日で死なせてしまい、一週間泣き暮らしたのが、島にとっての唯一のキャリアと呼べるものだった。
 だが、アロワナは金魚を喰う。
「なあ、次大。グッピーでもキャリアはキャリアだ。アロワナと大した違いはねぇ。この事件には雑布が見逃したウラがあるはずだ。そう思って、もういっぺん調べてみようぜ」

【今回の登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。この物語の主人公。
矢浪 次大(やろうじだい)=島の部下。グッピー飼育歴10年のキャリアを持つ。
雑布 刔(ぞうふえぐる)=一課長。アロワナ飼育歴20年のバリバリのキャリア。


posted by プアマリナ at 11:56| 沖縄 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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