2004年11月18日

第二話:いつも事件は突然に

「デカ長、事件発生です。参野場海岸にホトケ!」
 電話を切るなり立ち上がった矢浪刑事。二課の面々に緊張が走った。
「よし、次大。俺も一緒に出る」
 島も自分の上着を掴むなり、一緒に駆け出そうとする。が、ふと自分の席に目をやった。「いや、ここは慌てても仕方ねぇ…」
 躊躇した挙句、座り直し、一口に残りの豚丼を頬張る。参野場海岸なら車を飛ばせば5分の距離だ。
「デカ長、さっきの凄かったですねぇ」
 車を急発進させながら、矢浪が水を向けてくる。なに、あの程度の冷めた丼ぐらいなら一口だと嘯き、島は言った。
「次大、やや急げ。また一課に先を越されたんじゃ、たまらねぇ」
 無線を通して事件の緊迫度合が如実に伝わってくるが、第一報で現場に駆けつけたのはまだ若い巡査らしく、連絡の内容が今一つ要領を得ない。
--- ・・・ガイシャの年齢・性別は不明。甲長およそ・・・・・・は、アイボリー・・・ ---
--- 頭切れ。尻尾切れ。再び送れ! ---
--- ・・頭は・・・尻尾は湾曲、但し・・・の中にあって確認できず ---
 たまらず、島は無線のスイッチを切った。尻尾が湾曲だと。何を言っていやがるんだ。
「おい、次大、今の意味判るか? 甲長だと? 尻尾が曲がってるてぇとガイシャはエビか?」
「デカ長、多分、ヤドカリでしょう。『尻尾は湾曲、但し貝殻の中にあって確認できず』と、そう言ったんじゃないですか…」
「ほう、さすがバリバリのキャリアは違うな」一応、感心して見せる。「だがデカは現場百遍。それを忘れるんじゃねぇぞ」
「もちろんです。だから、自分は今年の夏季休暇にも、ちゃんと沖縄に行ってきました」
 なるほど俺は夏休みも取れなかったな、と島は遠い目を車外に向けた。その目に[参野場ビーチ]と書かれた看板が段々と大きくなって近づいてくる。


【今回の登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。この物語の主人公。
矢浪 次大(やろうじだい)=飼育歴10年以上のキャリアを持つ。


posted by プアマリナ at 16:25| 沖縄 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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