2004年11月12日

第一話

 奥作の耳には、遺族の口から飛びだした怨みの声が、いつまでも残っていた。
「数年以上生きる様なペットを一年やそこらで死なせてしまった場合は、☆になったのでもなければ、死んだのでもなく、殺したと言うのです」
 なるほど、言葉は正しく使いたいものだと思いながら、奥作は、冷めてしまった豚丼に視線と生卵を落とした…。
「デカ長、聞き込み行ってきます」
 若手のホープ阿有が、伊勢屋の定食を平らげる間もなく、慌ただしく駆け出そうとするのを押しとどめ、署内でも知らぬ者のないその鋭い目をギョロリとひん剥き、奥作は言った。
「おい追生、まあ座れ」
「はぁ、自分サバ喰うとブツブツ出るんすよ。デカ長、喰っていいっすよ」
「ホントか…。じゃない…。いや、サバはありがたくもらっとくが、おい追生よ。殺ペットには必ず共犯者がいて、場合によっては飼育者がホンボシじゃあない場合もあるんだ。その辺は判ってんだろうな」
「またデカ長得意の若手イビリが始まりましたか…」
 横から口を出したのは、二課の最古参にして平刑事の比望。言いながらも、利き手の左手に箸を握ったまま阿有の残したサバから目を離さないとは油断ならない。
「中さんは、黙っててくれんか」そう言いながらサバを箸で押さえ、奥作はまた阿有に目を向けた。「どんな共犯者が考えられるんだ。言ってみろ」
「はあ…」手にしたコートを机の上に置き、阿有は目を虚空に据えた。「正しい知識を与えなかったペットショップ、間違ったブームを作ったメディア、ペットを生き物と思わないバラエティショップ、儲けるためならなんでもする企業、えーっと、それから…」
「これだ!」
 奥作は出し抜けに大声で叫んだ。それほどこのサバは旨かった。


【登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。この物語の主人公。
阿有 追生(あゆついしょう)=若手のホープ。奥作の部下。
比望 中省(ひぼうちゅうしょう)=平刑事。


posted by プアマリナ at 21:31| 沖縄 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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