2005年08月25日

外伝:闘い済んで…。(間欠編)

 うなだれて、引っ立てられていく集団を横目に見ながら、島は口子の元へ歩いていった。
「口子さん、どうもお疲れさまでした」
「島さん、いつも言ってるだろう。そのファッションセンスは、どうにかならないのかね。そんな恰好で歩いてるのは、今どき非番の警察官ぐらいのものだよ」
「実際非番だったんですが…」島は頭をポリポリ掻いた。「いや、そんなことより口子さん。あの自称愛好家どもの騒動の裏には、例の果物屋がかんでます」
 口子は、やれやれというように島を見て、首を振った。
「君は、今さら何を言ってるんだ。私が君を助けるために、この大部隊を繰り出したとでも? それとも、たまたま完全武装の一個大隊を連れて飲みに出たところで、この遭遇戦になったとでも?」
「その後者の方で…。」
「ばか! 果物屋については、色々と調べがついてたんだ。オカヤドカリの飼育情報に関して、他人から盗んだ、それも商品販売に役立つよう歪曲した情報だけを流布させ、商品販売に不利な飼育情報については“オカヤドカリの生態は、はっきりわかっていません”と論理のすり替えを行い、時には巧みに善良かつ無知を装いつつ、今回の石鹸ネタのような、てめぇんとこの高マージン商品を売らんがためのセコいガセネタを流し、被害者の再三にわたる抗議は一顧だにせず、普段は忙しい忙しいと抜かしてるくせに、見かねた善良な人間のしごく真っ当な意見は、あっと言う間に消しちまう。その行状は真に許しがたい」
「なら、そっちの方にも捕方が回ってるんですか?」
「それがだね、島さん」さすがの口子が言い淀む。「この件に関しては、我々は既に管轄外だ」
 島の怒りが爆発した。
「なんですって! そんな馬鹿な! まさか口子さんまで、この件は分化庁の管轄だってぇ、逃げるわけじゃないでしょうね」
「そう怒るな」なだめるように両手を広げた。「ところで、その分化庁なら何度メールを出しても梨の礫で、誰が電話しても“今、担当者は不在です”だ。同じ公僕としてみれば許しがたい怠慢だよな…って、そうじゃない。この件に関しては、既に加藤改が動いてる」
 島は、ハッと息を飲んだ。
「なんと! あのカンキー和尚部隊が!?」
「そうだ。捕獲しやすい繁殖期間中のオカヤドカリを大量に買い漁り、抱卵していると判ったうえで高値で売り捌き、あまつさえ種の多様性保護を全く無視してゾエアの乱放逐を促すような野郎でも、同情したくなってきただろ?」
「幸運を祈りたいですね。ヤツにはきっと、それが必要になるでしょう」
「さてと」口子は表情を和らげ、島から視線をずらした。「阿有くん、矢浪くん、我々の仕事は終わったよ。ご苦労さん。飲み直すとするか!」
 その背中を見ながら島は一人ごちた。
「やっぱり飲んでたんじゃねえか…」



【今回の登場人物紹介】
島 奥作(しまおくそく)=デカ長。非番を返上。
阿有 追生(あゆついしょう)=若手のピース。島の部下。さっきまで飲んでいた。
矢浪 次大(やろうじだい)=島の部下。キャリア。さっきまで飲んでいた。
口子ボス(ぐちこボス)=二課長。島の上司。さっきまで飲んでいた。

【会話に登場した組織の解説】
加藤改カンキー和尚部隊(かとうあらためカンキーおしょうぶたい)
俗姓加藤、得度後カンキー和尚を名乗る謎の人物に率いられた特殊部隊。かなり情け容赦のない手段を採ることで、その筋では有名らしい。蛇足だが部隊の英文表記は「Team Kanky osho」。
デカ長:島 奥作 外伝〈了〉


posted by プアマリナ at 15:02| 沖縄 ☀| Comment(6) | TrackBack(0) | デカ長:島 奥作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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